2020
12
Apr

Sensitive Soul

まだまだ朝夕は肌寒い。そんな時期ではあるが、Hope TalaのEP『Sensitive Soul』を聴くと、早くも夏が待ち遠しくなってくる。彼女の音楽は、夏の窓から流れ込んでくる青草の香りの混じった風のような、不思議な魅力があるからだ。

本EPを語る上で触れなければならないことといえば、やはりネオソウルとボサノバの奇跡的なクロスオーバーについてだろう。まずは本EPのキラーチューン、『Jealous』を聴いていただきたい。

穏やかな横ノリやラテンな音色のギター、パーカッションのチョイスも相まって、最初の手触りは完全にボサノバだ。だが、曲全体をぐっと引きで見てみると、ビートの構成やコード進行は現代的なネオソウルという印象を与える。そう、これこそがHope Talaの魔術だ。爽やかでどこか郊外的なイメージのボサノバを、都会的で洗練されたネオソウルという建付けの中に組み上げてしまう。一見強引なようにも思えるその試みは、一聴いただければ分かるとおり、実に美しい共鳴を起こしている。

『Jealous』に続く本作3曲目、『Sunburn』も語らずにはいられない。EP内でもビートが前に出たコントラストの効いたトラックだが、やはり体は自然と横に揺れる。しかも、ギターのシンプルなパターンで曲全体が構成されているようでありながら、折々でホーンセクションのフレーズが入ってきたり、キーボードがさりげなくあしらわれていたりと、実に芸が細かい。「神は細部に宿る」とは、まさにこのことかもしれない。

加えて、Hope Talaの一番の武器は、言うまでもなく彼女自身の歌声にある。ハスキーでいて、かつSadeのような艶を纏った声は、ネオソウルシンガーが群雄割拠する今現在でも、比肩する者はいないと言っても過言ではない。EP内のどの曲もトラックが素晴らしいことは勿論だが、やはり彼女の歌声が乗ることでその魅力を増している。

2曲目、3曲目とラテン的な要素にフォーカスした紹介となったが、続く4曲目、D.T.Mはかなりブラックミュージックとしての色合いが前面に出ている。今までのナンバーが夏の午後にゆったりと聴くようなイメージだとすれば、かたやこちらは夜のチルアウトといった印象だ。そしてやはりここでも、彼女のややくすんだ声が耳に残る。

リードトラック、『Lovestained』も含めて名曲が目白押しの本作だが、ラストを飾る『Sentir』では、”Sensitive”=感受性を表に出すことの難しさが語られている。「感情をため込むことは苦しいが、さらけ出しすぎることもまた理性的ではない」という発言に続けて彼女は「それでも、感受性を失ってまで生きていたいとは自分は思わない」、そんな言葉を残して作品の幕を閉じる。ボサノバとネオソウルのクロスオーバーも、夏が恋しくなるような音色も、隅々まで練られた各曲の構成も、全ては彼女の繊細な感受性による産物に他ならないのかもしれない。

この作品が好きなら

『Predictions』

NYはブルックリンのソウルバンド、79.5のアルバム。1曲目のI Stay, You Stayからオーセンティックなソウルサウンドが炸裂する。3人の女性ボーカルを擁していることもあり、多彩なレンジの表現を繰り出しているところも魅力。ジャケットデザインが強烈なのはご愛敬か。

『Shea Butter Baby』

アダルトな雰囲気を漂わせるネオソウルシンガー、Ari Lennox。代表曲『Whipped Cream』を始め、スムースな名曲ぞろいの1枚。最近Doja Catによるラップが入ったRemixが評判を呼んでいる『BMO』も是非押さえておきたいところ。

 
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