4月1日、カネコアヤノの両A面シングル『爛漫/星占いと朝』がリリースされた。これまで以上にバンド構成が重視された印象を受ける今作だが、これまでの彼女の作品同様、聴く人の心に寄り添うような音楽であることに変わりはない。今回は両トラックの持つ魅力について、簡単に解説していきたい。
『爛漫』は、回りくどいことは抜きのストレートなロックだ。煌びやか、というよりは静かに静かに熱を帯びていくナンバーといえるかもしれない。バンド隊の演奏が随所で光る曲だが、中でもドラムに着目したい。前半はずっしりとシンプルなビートを刻んでいるが、メインフレーズ(「お前は知るのか~」から)に入ると、一転エモーショナルなパターンを叩きだす。ここでため込まれていた曲の熱量が一気に放出される。この一気にギアが上がる感覚は、聴けば聴くほど癖になる。また、2番のサビが過ぎてからアウトロまでの間に踏まれるバスドラムも、この曲の力強さを端的に表していて非常に印象深い。
そして何より、カネコアヤノの曲を語るのであれば、やはり彼女の綴る言葉にも注目したい。ドラムのパターンが変わって演奏に一番熱のこもるところで、彼女はこう歌う。
お前は知るのか 季節の終わりに散る椿の美しさを
ご存知の方もいるだろうが、椿は通常、花弁が1枚ずつ散るのではなく、花全体が落ちるように散る(本サイトの法然院の写真を参照されたい:http://onceinalifetime.jp/portfolio/%e6%b3%95%e7%84%b6%e9%99%a2/)。日本で花が散るといえば、桜の花が1枚ずつ散る諸行無常な風景が思い浮かぶのではないだろうか。だが、彼女は椿が赤々とした色を湛えて、咲いている姿そのままに落花していく様に美しさを見出している。そんな椿を自らの心と喩えるからこそ、彼女はこの曲をこれほどに真っすぐで、力強い曲構成にしたのだろう。
2曲目は一転、彼女の奔放な歌声が輝く軽やかなナンバーだ。ところどころで入るコーラスも爽やかで、今のような季節にピッタリな雰囲気に仕上がっている。また、曲のフレーズに併せるような言葉選びも聴いていて楽しい(開口一番「いけしゃあしゃあと」なんて言う歌詞、おそらくこれまでもこれからもお目にかかることはないだろう)。
カネコアヤノの歌が人々の心に響くのは、ただ優しい言葉が並んでいるからではない。普通ならうっかり見落としてしまいそうな感情の機微を、一瞬たりとて見逃さずに掬い上げる鋭い感性があるからだ。そしてそんな鋭敏な感覚から紡がれる言葉と音が、時に行く先の見えなくなった人の光となり、寒さに震える人に熱をもたらす。引き続き不安な日々の続くことになりそうだが、彼女の灯す明かりを頼りに乗り越えていきたいものだ。
この作品が好きなら
『昼間から夜』
SSW、mei eharaが4月にリリースしたシングル。これまでアシッドフォークやファンクなどを多様に織り交ぜた作品を発表してきたが、今回はブラジル音楽やダブのフレーバーを漂わせる仕上がり。
『はなたば』
昨年リリースされたシャムキャッツのEP。キラキラのギターが印象的な1曲目『おくまんこうねん』や少しサーフな仕上がりの『かわいいコックさん』等、日々に寄り添うトラックを全5曲収録。

