もし、兵士として戦場に行くことになったら自分は何を持っていくだろうか。きっとその時一番大切なもを持っていくに違いない。もしかしたらこの本かもしれない。読んでそう思った。それぐらいこの本が好きだ。思わず英語版も読んでしまうほどに。
本作では、作者であるティム・オブライエンが実際にベトナム戦争に従軍した経験をもとにしたフィクションであり、”本当の戦争の話”である。作中では魅力的な人物が沢山登場して、それぞれに人生を持ちエピソードが語られる。なかにはグリーンベレーもジャングルに篭り始める女子学生などとんでもない話や下品な会話もある。
戦争モノとはいえ、語り口は軽妙で難解でもなく、勇ましくもない。さくさくと読み進め、途中途中で抉られ、泥沼に沈む。
実際のベトナム戦争も、すぐに決着がつくはずの戦争なのに泥沼化し、兵士たちは何処から敵兵が襲いかかってくるかもわからない異国のジャングルにて戦い続け疲弊することとなった。そしてこのダメージは戦争が終わり自国へと帰ってからも残り続ける。
とある登場人物が帰国したのち、地元の湖の周りを延々と車で周り続ける話がある。まるで出口を見失ってしまったかのように。虚構と現実の狭間でぐるぐると周り続けている。読者もまた、本当の戦争の話でありフィクションという矛盾に迷い込んでしまうかもしれない。
本作において、作者は戦争を語らない。語るのは嘘のような狂気、仲間の死、叶わない愛、汚物と泥にまみれた死体、他愛もない下品な会話や噂話、そして殺した相手の姿だ。そしてそれこそが本当の戦争のはなしだ。
この本が好きなら
『キャッチ=22』
第二次世界大戦が舞台。イタリアの島を舞台に、狂気に怯える男を描くディストピア小説の名作。異常な軍規(キャッチ=22)が有名(狂気に陥れば除隊できるが、自分が狂気だと思う奴はまだ狂気に陥ってない)
『一時帰還』
全米図書賞受賞作。イラク戦争とアメリカを描いてる。笑えるような悲しいような極限状態と狂気が『本当の戦争の話をしよう』に似ている。大学時代、作中短編が翻訳課題の候補作にあったため、英語力が足りないにも関わらず突撃し、極限状態に陥るという個人的に思い出深い作品。

